【第2部】戦術編:「点」を「線」につなげる実行力


サブタイトル:崇高な理論を、現場の熱狂に変える

どれほど優れた「戦略」という設計図があっても、それだけでは一円の利益も生みません。戦略が「Where(どこで戦うか)」なら、戦術は「How(どう勝つか)」です。

第2部では、戦略を死文化させず、組織の隅々まで「勝利の規律」を浸透させるための戦術論を深掘りします。

1. 戦術の役割:経営者の「言葉」を「行動」に翻訳する

戦略は往々にして抽象的になりがちです。「顧客満足度の向上」や「地域No.1」という言葉は、方向性としては正しくても、現場の社員にとっては「具体的に今日、何をすればいいのか」が分かりません。

  • 具体化という翻訳: 戦術とは、戦略を「迷いのない行動」に落とし込む翻訳作業です。例えば、「地域密着による信頼獲得」という戦略なら、戦術は「訪問時には必ず靴を揃え、前回伺った際のご家族の体調について一言添える」というレベルまで具体化されるべきです。
  • 「点」を「線」にする: SNSの投稿、チラシのデザイン、営業のトーク。これらバラバラに存在する「点(施策)」が、第1部で決めた戦略という一本の軸に沿って「線」として繋がっているか。この一貫性を担保することこそが、戦術の要諦です。

2. 戦術を回す2つのエンジン:PDCAとOODAループ

戦術を機能させるには、実行の「型」が必要です。ここでは、性質の異なる2つのフレームワークを使い分ける視点を持ちましょう。

① 改善のPDCA(計画的実行)

第1部で定めた戦略に基づき、着実に成果を積み上げるためのエンジンです。

  • Plan(戦術設計): 戦略に沿った具体的な行動計画を立てる。
  • Do(実行): 現場で徹底する。
  • Check/Act(検証・改善): 「チラシの反応率はどうだったか?」をデータで検証し、次の一手を修正する。
    経営者の役割: 現場が「やりっぱなし」にならないよう、数字と事実に基づいた振り返りの場を作ることです。

② 応戦のOODA(即時判断)

市場の変化や競合の動き、現場で起きる予期せぬトラブルに対応するためのエンジンです。

  • Observe(観察)/ Orient(情勢判断): 現場の違和感や顧客の変化をいち早く察知し、それが何を意味するか考える。
  • Decide(意思決定)/ Act(実行): 計画になくても、その場で「今、何をすべきか」を判断し、動く。
    経営者の役割: 現場に対し「戦略の範囲内なら、自分の判断で動いていい」という許可と信頼を与えることです。

※OODAについてこちらを参考にしてください。https://youtu.be/BftdY7cdbAg

3. 地域密着型企業の「勝ち筋」を作る戦術の具体例

第1部で登場した「町の電器店」の例で見てみましょう。彼らの戦略は「高齢者の不安を取り除くこと」でした。

  • PDCA的な戦術: 「月に一度、全顧客を訪問して御用聞きをする」という計画を立て、漏れなく実行し、そこから得られた修理案件の成約率を改善していく。
  • OODA的な戦術: 訪問した際、顧客の足元がおぼつかないことに気づいた(観察)。「これは家電の不具合より転倒の危険の方が深刻だ」と判断(情勢判断)。その場で手すりの設置を提案したり、重い荷物を動かしてあげたりする(意思決定・実行)。

この「計画的なルーチン(PDCA)」と「現場の機転(OODA)」の融合こそが、大手に真似できない強力な戦術となります。

4. 「手段の目的化」という病:戦術の罠を回避する

戦術において最も警戒すべきは、手段が目的にすり替わることです。

「認知度を上げるためにSNSを始める」という戦術が、いつの間にか「毎日投稿すること」自体が目的になり、内容が自社の戦略(強み)と関係のないものになっていませんか?

経営者は常に現場に対し、「その行動は、我々の戦略(独自の価値提供)に繋がっているか?」と問い続けなければなりません。

5. 戦術を機能させるための「3つの適合性」

最後に、自社の戦術が健全かどうかをチェックしてください。

  1. 戦略適合性: その戦術は、第1部で決めた「やらないこと」を破っていないか?
  2. リソース適合性: 現場が疲弊せず、継続できる仕組みか?(無理な根性論は戦術ではない)
  3. 市場適合性: 顧客は喜んでいるか?現場の「手応え」を吸い上げ、柔軟に戦術を修正できているか?

経営者への問い

「あなたの掲げる戦略を、新入社員が明日から実行できる『3つの具体的なアクション』に分解できていますか?」

「現場の社員に、マニュアルを超えて動くための『判断基準(ものさし)』を渡していますか?」

戦術とは、経営者の「想い」を、現場の「自信」へと変える責任ある翻訳作業なのです。


第3部(完結編)予告

第1部で「進むべき道」を定め、第2部で「具体的な歩き方」を構築しました。

しかし、現実は常に変化します。道が塞がっていることもあれば、歩き方が通用しないこともあります。

最終回となる第3部では、戦略と戦術を高い次元で循環させ、変化の激しい時代を突破するための【総論】戦略と戦術の「黄金の循環」を提示します。

ではでは、Enjoy your life.

関連動画:https://youtu.be/NMj3KG2DHFg